COLUMN

おっぱい事変13|ガーゼの出番

これは、ここ1年半くらいの期間に起こった、いや現在も進行形の、そこそこ人生を揺るがせたお話です。

脱毛問題2

ガーゼの帽子

ウィッグの準備は万全。でもウィッグをつけずに過ごす日もあるだろし、帽子は必要と思っていました。抗がん剤治療が始まり、浮腫み問題で原因と対策探究が止まらない中、帽子になかなか着手できずにいましたが、日々抜け続ける髪の毛に背中を押され、作り始めました。

勿論ガーゼの生地で、です。

スキンヘッドに薄い生地の帽子を被ると、ボリューム感が無くちょっと貧弱に見えるので、厚みのある6重ガーゼで作ることにしました。

参考書は、『きれいに作れる帽子』赤峰清香さん 主婦と生活社

初めに作ったのは、このチューリップハットです。

頭にかぶる部分のパーツを「クラウン」と言うそうです。このチューリップハットは、「トップクラウン」表裏各1枚と「サイドクラウン」表裏各6枚で作っています。

表側も内側も6重ガーゼで作っているので、合計12重。ふっくらした仕上がりです。

初めてガーゼで帽子を作ったので、苦戦しました。6重ガーゼは、6枚の生地が繋がって織られているので、1枚1枚がバラバラになったりはしないのですが、生地の端がほつれやすいんです。ロックミシンが無いので、平縫いとジグザグ縫いで、ほつれ防止のステッチを入れながら作りました。

1個作ると、裁断をもっと丁寧にすればよかったとか、しつけ縫いすればよかったとか、いろいろ改善したい事が出てきます。

じゃあ、もう1個作るか。

また同じものを作るのも芸がないので、チューリップハット1作目を参考に型紙を変形し、丸みのある形にしてみました。

1作目のチューリップハットは、「サイドクラウン」が前側・脇側・後ろ側と3種類あり、それがまた微妙な違いで、裁断後の生地の見分けが付きにくく難儀しました。

2作目は、「トップクラウン」無し、1種類の「サイドクラウン」だけで作れるようにしました。全部同じなので間違いが起きません。

裁断と縫製が、1作目よりシンプルになりました。それでも、まあまあ時間がかかり、治療が始まって以来初めて12時過ぎまで夜更かし。目的があってやる気が出れば、ニンゲン働けるものです。でも、こういう無理の積み重ねがカラダに負担をかけるんだよなぁ。気をつけねば。

2作目を作りながら、ハタと思い着いたことがありました。

ウィッグの汗問題

ウィッグを買った時、「夏は暑いので内側に汗取りパッドをつけるといいですよ」とアドバイスされました。その時から、ガーゼで汗取りパッドを作ろうと思っていたんです。

2作目チューリップハットを作りながら、この頭頂部、使えるんじゃない?

で、作ったのがこちらです。

ガーゼのインナーキャップ

家にロックミシンがないので、平縫いだけで端がほつれないように処理しました。でも使っているうちに、こんな風に糸が出てきてしまいました。これでも使ってますが。

頭のカーブに合うように立体的に作っているので、スキンヘッドにジャストフィット。この上にウィッグを被ります。

ウィッグの内側は、メッシュ生地ではありますが、化学繊維なので汗は吸いません。肌あたりもペタっとしています。1枚ガーゼがあるだけで、肌あたりも汗の吸収も格段によくなりました!

夏の暑い日に外を歩いていても、頭が蒸れることなく、汗がしたたり落ちるなんてこともなく、快適に過ごせました。

これは、他の人にも快適に使ってもらえるんじゃないかしら?

抗がん剤治療が終わったら、縫製工場にお願いして試作品を作ってみようと思いました。

ちょっと時間を早送りして

今日のコラムはまだ2022年6月の只中ですが、ここからは9月まで早送り。

9月初旬に抗がん剤治療が終わり、それからパターンやサイズを検討して、作ったのがこちらです。

生地の端はロックミシンで処理しています。

直接肌に当たるモノなので、ロックミシンと平縫いに使う糸は、綿100%です。

サイズは、S(54.5cm) と M(56cm) の2種類を作りました。

このサイズは、日本人女性の頭のサイズデータを参考にしています。

私の使用感はとても快適だったのですが、それだけで商品化してしまうのは焦りすぎかと思い、もっと沢山の人に使っていただき、使用感を共有できたら。

という事で、試供品を提供することにしました。

9月にはこの事を決めていたのですが、その後入院手術などがあり、準備が整うのにもう少し時間がかかります。実際に提供を始められるのは、来年1月以降になる予定です。その際は、こちらのホームページやInstagramなどでお知らせします。

今や日本人女性の9人に1人は乳がんに罹ります。がんは特別ではなく身近な病気なんです。これは自分がなってみてしみじみ思いました。がん治療期間をなるべく快適に過ごせるように、ガーゼが役に立てたら嬉しいと思っています。

しばしお待ちを!

(つづく)

🎀現在進行形の乳がん治療奮闘記。週1回を目指して書いていきます。たまに遅れますが、どうぞご容赦くださいませ🎀

ウィッグを外しましたー

オブラブ代表 Mayumi Nishizawa

武蔵野美術大学卒業。つくること全般に興味があり、凝り性。好きな言葉「歩留り」